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6月雑感①(ジョコビッチ生涯グランドスラム達成、、イギリスEU離脱、重松清と思い遣ること、などなど)

年初には今年こそ定期的な更新をと思いながら、またもその決意を反故にしかけている自分が情けない。だが、今月から雑感という形で、月に一度は何か書いていきたい。(と考えたのが6月下旬。そこからグズグズしている間に月を跨いでしまい、7月となってしまいました。。。ですが、タイトルは「7月雑感」とはしないでおきます。)


まずジョコビッチについて。


このブログの実質的最初の記事であるテニスのジョコビッチが生涯グランドスラム(=キャリア中に4つのメジャー大会を優勝すること)を達成した。もう時機を逸してしまったし、次のグランドスラムであるウィンブルドンも始まっており、何よりジョコビッチが負けそうになっている現在(*昨夜、サム・クエリーに2セットを先取されたところで日没順延となり、かろうじて残っている状態)、イマサラ感は否めないのだけれど、記念的・備忘録的な意味で、一ファンとして何か記事を書いておきたいなと思う。


2008年に私自身が12年ぶりにテニスを再開したとき、私とグリップの握りが似ているからというただそれだけの理由から、その年の全豪オープンを優勝したジョコビッチに注目するようになった。しかし、ジョコビッチはその最初のグランドスラムを取って以降三年間、一度もグランドスラムを取ることはできなかった。フェデラーとナダルの影でもがき続け、常に二人の後塵を拝し、さらにはデルポトロら下の世代にも迫られる、そんな時期が続いた。


フォアハンドもバックハンドも穴がなく、ベースライン際では無類の強さを発揮するのに、せっかく追い詰めたところでスマッシュミス。相手選手がロブをあげるたびにはらはらした。平常心ではほとんどミスをせず精密機械と言われているのに、大事なポイントでビビってしまい、守りに入る。むなしくネットにかかるドロップショットミスを何度見たかしれない。当時WOWOW解説者だった柳さんからは「なんで[ふつうに]打たないんですかねー」と言われてしまう始末。だから、いずれナンバー1になることはあっても、グランドスラムを数度優勝することはあっても、まさかグランドスラムを12回も優勝し、生涯グランドスラムまで達成するような選手になるとは想像もしていなかった。


もちろん、当時もランキングナンバー3の選手であり、トッププロ中のトッププロだったのだから、強いのは当たり前だ。しかし、ジョコビッチには強さとともに弱さが同居していた。それは技術的な面でも、精神的な面でも。素人の私がこんなことを言うのも本当におこがましいのだが、試合中の精神的な起伏の激しさは、当時のジョコビッチの試合を見たものであればどんな人でもすぐに気づいたはずだ。


しかし、ある意味で、そうした危うさがジョコビッチの独特の魅力となっていた。飽きることなく応援を続けることができたのも、そのことが大きかったのかもしれない。例えば、2010年の全米オープン準決勝。全米では一度も勝ったことのないフェデラーに、弱気なショットからダブルのマッチポイントを握られたときのジョコビッチは忘れられない。またフェデラーに勝てないのか。誰もがそう思ったそのときそれまでの弱気を払しょくし、クロスにフォアハンドのリターンエースを決めてみせた。その攻めの姿勢により最終的にジョコビッチは初めて全米でフェデラーより勝利をもぎ取るのだが、そこにはそれまで3年間のドラマが凝縮されているような瞬間であったと思う。


この2年ほどのジョコビッチは本当に当時とは別次元のようなテニスを展開している。そこには観るものの想像を超える恐ろしいまでの努力があったのだろうと思う。有名なグルテン・フリーによる食事制限はもちろんのこと、毎年毎大会、自分に足りない技術を習得して大会に臨み、かつて苦手であったはずのスマッシュやボレーは改善され、特にドロップショットなどは今やジョコビッチの武器のひとつとすらなっている。フォアハンドのアングルショット、バックハンドのダウンザラインの精度も以前とは比べ物にならず、(時々ラケットをバキバキにする悪癖はあるにせよ)メンタルの起伏も驚くほどになくなった。


それでも、生涯グランドスラムのかかった全仏は特別な舞台であった。昨年は本当に完璧なテニスでナダルに勝利したにもかかわらず、決勝ではワウリンカに敗れてしまった。肉体的な疲労もあったろうが、やはり勝ちたいと思ったときの精神的なコントロールが難しかったのだろうと思う。そして表彰式で流した涙。その涙が今年報われたということは、本当に本当にうれしい(その陰でグランドスラム決勝10回目にして8敗目を喫したマレーの悔しさに満ちた表情も忘れられないけれど。本当にいろいろなドラマがあるなぁ)。


生涯グランドスラムも達成により、ジョコビッチはウィンブルドンでは早々に負けてしまうかもしれない。ファンとしても、ちょっとほっとしてしまっているところがあって、もちろん年間グランドスラムやゴールデンスラムを達成してほしいのだけれど、なんだかそれは欲張りすぎるかなとも思ってしまう。このあたりでフェデラーの復活や、錦織のグランドスラム初優勝(それはなんだか全米で達成されそうな気がするし、その方がドラマ性もあってよいかなとも思ったり)も見てみたい気もするが、さてどうなるだろう。

 
 長くなってしまったので、ひとまずここまで。

by shoichi294 | 2016-07-02 21:19 | テニス | Comments(0)

かつて東京の某理系大学に勤務し、今は京都の女子大に移ったFukushi(福島祥一郎)のブログ。文学から英語、趣味のテニスやcafe、猫の話まで、好きなことを、好きなように書き記す備忘録的ブログです。


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